お昼の東洋哲学

日本の伝統的価値観だとか殊更に言われるようになった昨今。ほんとうにそれは伝統的な価値観なのか基本に立ち返ってみよう。お昼に1つずつどうぞ。序をのぞき全10章。

2014-01-01から1年間の記事一覧

序  岡倉覚三(天心)『茶の本』より

岡倉覚三(天心)『茶の本』より。 西洋人は、日本が平和な文芸にふけっていた間は、野蛮国と見なしていたものである。しかるに満州の戦場に大々的殺戮を行ない始めてから文明国と呼んでいる。近ごろ武士道――わが兵士に喜び勇んで身を捨てさせる死の術――につ…

1 山桜 〜大和心とはなにか〜

山桜 〜大和心とはなにか〜 保守・右翼の方に大変好まれている本居宣長という江戸時代の国学者がいる。 彼は、それまでの儒学=中国思想中心の学会を批判し、「日本の思想に立ち返れ」と説く。この辺りに、右寄りの人等が本居宣長を好む理由がある。 また「…

2 日本の神々とは?

日本の神々 神道は、明治維新後の国家神道とそれ以前では完全に別物というくらいに考えた方が良い。 本来の神道とはどういったものか。 『神道の逆襲』(菅野覚明著)を参考にすると「人々にとって、神さまはある時、突然、客人のようにどこからかやって来る…

3 世界初の死刑廃止国・日本

世界初の死刑廃止国・日本 日本が世界初の死刑廃止国であることは、あまり知られていない。 日本は725年に最初の「死刑廃止」を宣言する。これは世界初の死刑廃止である。他国に於いては1786年、中部イタリアの都市国家トスカナで、ルソーの思想からの発展で…

4 朱子学 〜「日本を取り戻す」との不思議な関係

朱子学 〜「日本を取り戻す」との不思議な関係 朱子学という儒学の一派がある。 かなり乱暴に説明すると・・ 宇宙は「理(原理)」と「気(運動)」の二つから成るとする「理気二元論」という思想が基本にある。そして人間の本性は「理(原理=純粋・善)」…

5 神判 〜なんとなく皆が反論・否定しにくい強力な何か〜

神判 〜なんとなく皆が反論・否定しにくい強力な何か〜 「神判」という、神仏に罪の有無や正邪を問う裁判形式が世界中広く存在していたのだが、特に日本はそれが長い期間残っていたという文化的特徴がある。法律の概念が最も進んでいた中国では紀元前にはほ…

6 日本の仏教 1 

日本の仏教 1 日本の仏教がオリジナルの仏教とは違うものである、ということは多くの人が知っている。そして「神仏習合」と言って、神道と仏教が重なり合っているということも知られている。だが、実は儒教もかなり混ざり合っているということはあまり知られ…

7 日本の仏教2

日本の仏教2 「日本の仏教はオリジナルの仏教とは違う」 それでは、日本の仏教はだめなのかというと、「違う」というだけでは、そうはならない。 仏陀の解釈では「それで良い」となる。なぜか? 初期の仏教は、めざす究極の境地に到達するために、民衆のそ…

8 山鹿素行〜日本こそ世界の中心と叫んだ男が言いたかったこと〜

山鹿素行 安倍総理の尊敬する偉人は吉田松陰だそうだ。ちなみにその吉田松陰に大きな影響を与えた人物のひとりに山鹿素行(1622〜1685)という思想家・兵学者がいる。この人もまた、保守・右翼にかなり人気のある思想家だ。 彼は江戸時代、幕府の正学となっ…

9 夭逝した江戸の天才・富永仲基

夭逝した江戸の天才・富永仲基 江戸時代の学者、富永仲基は、一般的な知名度は低いが、夭逝した天才として、東洋哲学畑では名高い。彼の思想をひと言で乱暴にまとめてしまうと「今の神道も仏教も儒教もぜーんぶインチキだ」ということになる。これを江戸時代…

10 最後に〜日本の思想は命を尊ぶ〜

僕は明治維新後の時代とソビエトは似ていると思っている。思想的な面で、それまで育んできたものを何らかの方向性に無理矢理、人為的に変更した点や、文化や宗教の多様性を奪い、単一の方向へ集約していくところなども似ている。そしてどちらの「壮大な実験…